ジープの3速ミッション『T90トランスミッション』について解説!

T90トランスミッション

この記事ではBorg Warner T90トランスミッションについてざっくり解説をします。
3速ジープに興味がある、または、T90トランスミッションとその国産モデルについてざっくり知りたいというかた向けの内容です。

目次

動機

今回のモチベーションは、以前からやってみたいと思っていたモディファイが実現可能なものなのかを検証するためです。そして折角の機会なので分解・検査をしながら、T90トランスミッションについてざっくり解説の記事を書くことにしました。

目の前にあるのは三菱ジープJ3R後期型の(KM4J形の)トランスミッションです。アメリカがルーツであるT90トランスミッションを日本でライセンス生産製造したものです。

それでは早速はじめましょう!

T90トランスミッション

概要

Borg Warner T90トランスミッションは、MBやGPWに搭載されていたT84トランスミッション(3速)の改良型として1945年に登場して1975年までの間、米国の各種ジープモデルに搭載されていた3速マニュアル・トランスミッションです。

第二次世界大戦後の民生用ジープの活躍と成功を支えたとも言える信頼性の高いトランスミッションです。
米国外での生産を含めると更に長い間生産されていました。日本では”3速ジープ”のトランスミッションとして知られ根強いファンがいます。

バリエーション

T90トランスミッションにはいくつかのバリエーションが確認されています。ジープだけではなく、GM、フォード、インターナショナルハーベスター、スチュードベーカーなどにも採用され、様々なバリエーションのT90ミッションが存在していました。

以下の記事でJ3Rのトランスミッションを分解して観察しながら、三菱ジープの3速ミッションとは何だったのかについてバリエーションの観点から紐解いてみました。
また、異なるバリエーションの部品を組み合わせることで、ギア比を変更する改造を行いました。

ケース

ケースの全長は約20.3cmとコンパクトです。鋳鉄製のケースは十分な強度があります。

ケースの背面(トランスファー側)は”テキサス・パターン”と呼ばれているボルト・パターンです。

T90トランスミッション 背面
洗浄前のKM4Jトランスミッション背面のテキサス・パターン。
オイルライン、各種シャフトとベアリング支持、ボルト穴、サービスホールがみられる。

日本国内では、サイドシフトの右ハンドル化対応のためケース右側面へシフトレバーの移設、左側面にはクラッチ操作の油圧化に伴うクラッチレリーズシリンダー取り付けボルト穴の設置、トップカバーにバックライトスイッチの取り付けなど、年式により独自の仕様変更が行われました。外観にも違いを見ることができます。

T90トランスミッション 右側面
洗浄前のKM4Jトランスミッションの右側面
T90トランスミッション 左側面
洗浄前のKM4Jトランスミッションの左側面

シフト

シフターの種類はフロアシフトとサイドシフトがあり、シフトパターンは文字通りの”H”パターンです。フロアシフトは左上が後退、左下が1速、右上が2速、右下が3速です。

T90トランスミッションのシフトパターン
T90トランスミッションのシフトパターン

シフトフィール

長いシフトレバーとそのストロークはトラック然としたものですが、「節度感ある」と高く評価されるフロアシフトの「カチッカチッ」としたシフトフィールに魅力を感じる人も多く、また私もその一人です。
この操作感はフロアシフトのトップカバーに収められたシフト・コントロール機構(のパペット・ボール/スプリングやシフトレールが動作すること)によるところで、トップカバー単体で操作してみることでも確認できます。
ちなみにT84トランスミッションのシフトレールはトップカバーではなくケース側に組み込まれていました。

ノンシンクロ

1速と後退は選択かみ合い式、2速と3速は等速かみ合い式、つまり、1速と後退はノンシンクロ、2速と3速がシンクロメッシュ式の前進3段後退1段マニュアル・トランスミッションです。

走行中に1速へシフトする時はダブルクラッチでシフトショックを軽減するテクニックが必要になります。
車を運転することに喜びを感じる人にとっては楽しい体験になるでしょう。

ギアレシオ

ジープに搭載されたT90トランスミッションの中で一般的と言えるT90Aの変速比です。

1速2.798
2速1.551
3速1.000
後退3.798
T90Aトランスミッションの変速比

トップギアである3速はその他の多くのトランスミッションと同様に1:1です。そのことから「ギアが3速しかないから最高速が遅い」ということではなく、T90Aに回転運動を伝えるL134またはF4-134エンジンの特性が低回転型であることと、ディファレンシャルの減速比が5.375と大きいことが最高速に影響していることがわかります。

使用オイルについて

SAE80~90 容量 1.42L

ブロッキング・リング、スラスト・ワッシャー、ブッシュには真鍮のような非鉄金属が使用されているため、それらを保護することが要求されている規格であるGL-4グレードなどのオイルを使用する必要があります。

おわりに

T90トランスミッションは、私が三菱ジープに乗り始めた頃に初めて分解・組み立てにチャレンジしたトランスミッションだったこと、そしてT90ミーティングという3速ジープ愛好家の集まりを通じて色々な人と知り合うことができたことから、想い出深く個人的に思い入れが強い特別なトランスミッションです。

最後まで読んで頂きありがとうございました。それでは!

T90トランスミッション

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この記事を書いた人

ジープ・軍用車専門レストアショップに勤めたあとIT業界へ転職。三菱ジープJ3R(不動)、J54A(不動)を所有。ジープ・JKラングラー・アンリミテッド・ルビコンでJeepライフ復帰。 東京在住。千葉拠点でのリモートワークやガレージライフについて情報発信しています。

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