ペンタスター(Pentastar) V6エンジンについてマニュアルやネットで調べられる範囲の情報でまとめました。私個人の理解と備忘のためのアウトプットを目的として記事を書いています。
概要
ペンタスターエンジンは、2009年のニューヨーク・インターナショナル・オートショーで発表されて2010年に製造が開始されました。2011年モデルから順次搭載され始めてジープ・ラングラーには2012年モデルから、現在はクライスラー、ダッヂ、ラム、ジープなど多くの車種に採用されています。
クライスラー・ペンタスターエンジンファミリー
特徴
クライスラー・ペンタスターエンジンファミリーは、アルミ鋳造のシリンダーブロックおよびシリンダーヘッドを採用したバンク角60度のDOHC 24バルブ・ガソリンV6エンジンです。
技術的には主に以下のような特徴があります。
- 低回転域からフラットなトルクカーブを発生させる高流量の吸排気ポートとVVT(Variable Valve Timing / デュアル可変バルブタイミング)の採用。
- エキゾーストマニホールドをヘッドに一体化することで部品点数を削減。
- キャニスター・フリー・オイルフィルター・エレメントの採用。環境への配慮とメンテナンス性向上。
- タイミング・チェーンの採用。高精度と長寿命を実現。
- 補機類を直接ブロックにボルトで固定することで振動や騒音を防止。
- ブロックの軽量化:アルミの使用量を削減し、車重とコストを削減。
バリエーション
ペンタスターエンジンには排気量が3.0L、3.2L、3.6Lのバリエーションがあります。
我が家で活躍中のジープ・JKラングラーには3.6Lエンジンが搭載されています。
その他のバリエーションとして、マセラティが再設計しフェラーリが組み立てを行ったF160エンジンがあります。ツインターボとインタークーラーを搭載し排気量は3.0Lながら最高出力は430psをたたき出すようです。
生産
ペンタスターエンジンは、トレントン・エンジン・サウス/ノース工場、トレド・エンジン工場、サルティロ・エンジン工場、ココモ・キャスティング工場で生産されています。
当初は「フェニックス」と名付けられていましたが、商標権の関係で正式発売前に名称が変更されました。
供給
ジープ、クライスラー、ダッヂ、ラム、マセラティ以外では、クライスラーから車両のOEM供給を受けていたフォルクスワーゲン・ルータン(日本名は「グランドボイジャー」)に搭載されました。
また、フィアットがクライスラーを子会社化したことによりペンタスターエンジンの使用権を獲得。ランチアとフィアットの大型モデルにも使用されました。
各部
シリンダーブロック
シリンダーブロックは高圧射出造形によるアルミ鋳造です。クランクシャフトは4点支持です。
オープンデッキ構造で上面のボア間には水路が設けてあり、シリンダー上死点側を積極的に冷却しています。
シリンダーには鋳鉄材のシリンダーライナーが使用されます。各シリンダーにはオイルジェットが備わり、シリンダーとピストンの冷却と潤滑を促しています。
エンジンの補機はブラケットを使わずブロックに直接ボルトで固定されています。これにより振動や騒音の発生を回避しています。エアコンコンプレッサーとオルタネーターはエンジンと前後方向が揃えられてブロックにボルト止めされ、サーペンタインベルトはテンショナーにより張力が保たれています。
ラングラーは渡河時の浸水を防ぐためにオルタネーターが高い位置にマウントされ、それにより吸気の取り回しが独自の設計となっているようです。このように車種によって仕様の違いやスペースの制約によって性能にも違いがでているようです。
シリンダーヘッド
シリンダーヘッドはセミパーマネント・モールド法のアルミ鋳造で、エキゾースト・マニフォールドがシリンダーヘッドに鋳込まれて内蔵される形になっています。
EGR(Eexhaust Gas Recirculation / 排気再循環)はエキゾースト・マニホールドから取り込んだ排気ガスを再度吸気させます。2016年からは、取り込んだ排気ガスの温度を冷却水によって低くする「クールドEGR」が採用されました。
バルブトレイン
4本のカムシャフトには独立したカム位相制御が行われ、エンジンの負荷と回転数に応じてバルブタイミングを最適化します。
クランクシャフトからタイミング・チェーンによって駆動力がカムプーリーに伝えられます。カムプーリーとカムシャフトの間には油圧室が設けられてオイルで満たされており、カムシャフトは油圧室のオイルに押されて駆動されることになります。この油圧室は進角側と遅角側に分かれていて、電動アクチュエーターがこの油圧室の片側に油圧を掛けることでカムシャフトとカムプーリーの位相が変化します。
カムシャフトはローラー・フィンガー・フォロワー(ロッカー・アームがシーソーに対して、フィンガー・フォロワーはスイングアーム式)を押し下げる事でバルブを開きます。軸受はニードル・ローラー・ベアリングです。
燃料噴射装置
各シリンダーの吸気ポート付近に独立したインジェクターを配置したマルチポートインジェクションです。
オイルパン
オイルパンはアッパーとローワーが分割された2ピース構造のものと、1ピース構造のものがあるようです。JKラングラーの2ピース構造のオイルパンはエンジンのグレード要件を高める目的で採用されたようです。JLラングラーはエンジンオイル容量が5クォートと1クォート少なくなっており、これはオイルパンの違いによるものと思われます。
オイルピックアップチューブとクランクシャフトの間にはウインデージ・トレイが備わっています。ウインデージ・トレイでオイルパンとクランクシャフトを仕切ることで、オイルがクランクシャフトの回転抵抗になるのを防ぐこと、オイルのエア噛みを防ぎ油圧を確保する効果があるとされています。
油圧系
オイルポンプ・プーリ―はクランクシャフトの真下に配置されています。ベーンタイプの可変容量オイルポンプはチェーンによって駆動力が伝達されます。ソレノイドでポンプを低圧または高圧のモードに切り替えて圧力と流量を調整します。
オイルピックアップチューブには異物を吸い込まないようにフィルターが付いています。
点火順序
前方から右バンクは1、3、5、左バンクは2、4、6で点火順序は覚えやすく1-2-3-4-5-6です。
諸元
我が家の2015年ジープ・JKラングラー・アンリミテッド・ルビコンの3.6LペンタスターV6エンジンは、最高出力284ps、最大トルク35.4kg・mとなっています。
種類・シリンダー数 | V型6気筒 DOHC |
バンク角 | 60度 |
ボア×ストローク(mm) | 96×83 |
総排気量(cc) | 3,604 |
最高出力(KW/rpm) | 209 (284ps) / 6,350 (ECE) |
最大トルク (N・m/rpm) | 347 (35.4kg.m) / 4,300 (ECE) |
圧縮比 | 10.2 : 1 |
燃料供給装置 | 電子式燃料噴射装置 |
使用燃料 | 無鉛レギュラーガソリン |
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最後に
これから少しずつ加筆・訂正・校正しようと思います。