『Dana18 最もジープらしいトランスファー』を解説!

目次

概要

ダナ18は、初期のMBやGPWから、その後のシビリアン・ジープやインターナショナル・ハーベスター(以降は”IH”)にも採用され、30年もの長い間生産され続けたトランスファーケースです。

歴史

1940年、米軍のライト・ウェイト・トラックのコンペティションでウィリスが契約を取り、ジープのトランスファーとしてよく知られる右側オフセットのDana18が採用されました。
バンタムとフォードのプロトタイプもDana18を採用していましたが、それらは左側オフセットでした。
どのメーカーが契約を取ったとしてもDana18が採用される状況ではあったので、この名前はどのみち活躍する役回りだったのかもしれません。

“THE OFFSET”

Dana18は、シンプルでコンパクト、そして、かなりのトルクを許容できます。
特徴は鋳鉄製のケースとギア駆動によってフロント/リアのアウトプットがどちらもオフセットされているところです。
オフセットされたフロント/リアのアウトプットシャフトは直線上にあり、これに合わせて前後のデフも右側にオフセットされる配置となっています。
米国で改造されている80インチのショートホイールベースのジープを詳しく調べると、Dana18が使われている事が殆どのようです。

アドバンテージ

Dana18の有利な点をいくつか挙げます。

  • 全長だけでなくトランスミッションとのマウント部も短いこと。
  • アウトプットがオフセットされ、下にドロップしていることからプロペラシャフトのU-ジョイントの角度が緩くなること。特にショートホイールベース車のリアにとっては重要な点になります。(ただし、これは地上高が下がるためディスアドバンテージにもなる。)
  • ギア駆動のため大きなトルクを許容できる。(もちろん限界はある)
  • アフターマーケットのサポートによって、多くの種類のトランスミッションとのアダプタビリティが高い。

上記の理由から、特にショートホイールベースのジープにV8パワーを投入する場合や、減速比が大きく、全長が長いトランスミッションをスワップする場合に最も現実的な選択肢になっています。
メンテナンスを怠らずマトモな走り方をしていればDana18を壊すことは稀です。

ここでは余談になりますが、1962年から使われ始めたDana20では、リアのアウトプットはトランスミッションの出力と直線上の配置に変更され、ハイレンジではギアを介す事なく直結となります。このため、比較的ノイズが少なく、当時は『サイレント・トランスファーケース』と言う謳い文句だったようです。
また、そのリアのアウトプット位置により、2WDと4WDのトラックなどでリアアクスルを共通部品化出来るという部品構成上のメリットもあったと思われます。

バージョン

Dana18もバージョンによって、様々な改良が適用されてきました。
特に「インターメディエイト・アイドラー・シャフト」に変更が重ねられてきたことから、その問題点も伺うことができます。

インプット・フランジは、「テキサス・パターン」と呼ばれる5ボルトのパターンで、Dana20と一部のIHに使われていたDana300も同じボルトパターンです。
テキサス・パターンの名前の由来は、インプット・フランジの形が、テキサス州に似ているからと言うことのようです。

Dana18には大きく分けて5種類が存在します。
ローレンジのギア比も変更されてきました。また、通称スモール・ホールDana18と呼ばれるものにも、幾つかの種類が存在する事がわかります。詳細は下記の通りです。

1941-1945 初期 軍用

MBとGPWのDana18。
ローレンジは、1.97:1。
インターメディエイト・アイドラー・シャフトの直径は、3/4インチ。
ミッションとのインプット・ロケーティング・ボアの直径は、3-5/32インチ(スモール・ホール)。

1945-1946 初期

プロトタイプのジープ6×6、CJ-1, CJ-2。
シリアルナンバーが、CJ2A-24196までのCJ-2A。
レアなバージョンです。
■変更点
ローレンジギア比 1.97⇒2.43

1946-1955 中期

■変更点
 - ローレンジギア比
    2.43⇒2.46
 - インターメディエイト・アイドラー・シャフトの直径
    3/4インチ⇒1-1/8インチ
 - インターメディエイト・アイドラー・シャフト・ベアリング
    ニードル・ローラー・ベアリング⇒ケージド・ローラー・ベアリング
     ※ローラー同士のフリクション軽減策がとられる。

1955-1971 後期

はっきりとしないが、1955年あたりから少しずつこのバージョンに変わっていったようです。
ウィリス・オーバーランド社が、モデル毎に管理していた前バージョンの在庫を消費しつつ、順次変更していったためと思われます。
■変更点
 - インターメディエイト・アイドラー・シャフトの直径
    1-1/8インチ⇒1-1/4インチ
 - インターメディエイト・アイドラー・シャフト・ベアリング
    ケージド・ローラー・ベアリング⇒ニードル・ローラー・ベアリング
 ※ニードル・ローラーの数を増やし、ベアリング・エリアを増やす事が目的でケージド・ローラー・ベアリングの使用が廃止され、合わせてインターメディエイト・アイドラー・シャフトの直径が大きくなったようです。

1966-1971 最終型

インプット・ロケーティング・ボアの直径が、4インチに大きくなり、ラージ・ホールDana18と呼ばれます。
このバージョンのDana18は、T86、またはT14トランスミッションとの組み合わせのみで、エンジンはビュイックのV6でした。
T-84とT-90では、トランスミッションとの位置決めがアウトプット・ベアリングのみでトランスファーケースがベアリングリテーナーの役割をしていますが、T-86とT-14には、ミッション側にアウトプット・ベアリング・リテーナーが付いていました。
これがトランスファーケース位置決めのインデックスの役割もしており、この直径が4インチでした。
少しずつですが、トランスミッションとトランスファーの相互依存関係を減らし、設計のモジュール化を進めていったように思われます。
因みに、Dana300になるとインプットシャフトにオイルシールも付き、オイル管理も個別となりました。
ただし、Dana300はミッションとのマウント部が比較的長くなります。

最もジープらしいトランスファー

ジープが様々な場面で活躍した歴史は、このトランスファーケースが発生させる四輪駆動と、そのP.T.O.ポートがあったからこそだと言っても過言ではありません。
ジープの歴史と、シンプルでコンパクトなデザインから、最もジープらしいトランスファーと言えます。
そして、その基本設計は三菱ジープにも受け継がれています。

ジープ J3 トランスファーケース
三菱ジープJ3Rのトランスファーケースをフロント側から見たところ
右側のテキサス・パターンの呼称をローカライズすれば「千葉県・パターン」、
左側のフロント・キャップのボルト・バターンは「レレレのおじさん・パターン」になるだろう。

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この記事を書いた人

ジープ・軍用車専門レストアショップに勤めたあとIT業界へ転職。三菱ジープJ3R(不動)、J54A(不動)を所有。ジープ・JKラングラー・アンリミテッド・ルビコンでJeepライフ復帰。 東京在住。千葉拠点でのリモートワークやガレージライフについて情報発信しています。

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