NP241OR Rock-Tracトランスファー解説
動機
ルビコンモデルのみに採用されているNew Process Gear 241J Rock-Tracトランスファー(以降NP241OR)について解説をしてみたいと思います。
NP241OR はRock-Trac 4×4システムの要であると言っても良いでしょう。
まだ納車前で実物が無く実際に分解整備もしたことが無いため、サービスマニュアルに書いてあることやネットで調べられる範囲の情報でまとめています。私個人の理解のためと備忘のためのアウトプットを兼ねて書きます。
概要
NP241ORはロッククローリングのマーケットに対するメーカーからの一つの回答としてTJ/JKのルビコンモデルのみに採用されたトランスファーです。GM/Dodgeのフルサイズトラックに使われているNP241の設計をベースに、Jeepでロッククローリングをすることを想定してLowレンジに4:1という大きな減速比を与えられました。※Non-Rubiconモデルは2.72:1
ケース・外観
全長は約38.7cm、重量は約41kgです。ミッション側は円形6ボルトパターンとなっています。
アルミニウムのケースは、4倍減速により生まれる大きなトルクを受け止めるためにいくつものリブによってケース全体が補強されています。
ケースの前方半分は大きなプラネタリーギアとアニュラスギアが収まっているため外見上も大きさが目立ちます。後方半分には機械式オイルポンプとドライブチェーンが収まります。オイルポンプにはストレーナーが付き、異物を吸い込まない工夫がされています。
駆動伝達方式
NP241ORはパートタイム式4×4システムです。基本的な設計が同じであるNP241と同様に4つの大きなプラネタリーギアとドライブチェーンが駆動伝達方式として採用されています。
リアへの出力はエンジンのクランクシャフトと同じ軸上にありHighレンジの時は直結でギア比は1:1となります。利点としてはトランスファーの全長を短くできることと、Highレンジにおける静粛性に優れているところです。
フロントへの出力は左側オフセットとなっていてドライブチェーンによって動力伝達されています。
許容トルクの面で考えるとギアドライブのほうが有利ですが、デメリットはギアノイズが大きくなるため快適性と環境への悪影響があることです。NP241ORは幅の広いチェーンを使うことで強度を高めつつ、チェーンドライブの静粛性を得ています。
シフトパターン
シフトパターンは前方から後方に向かって2WD Highレンジ→4WD Highレンジ→ニュートラル→4WD Lowレンジです。
2つのシフトフォークを1本のシフトレバーで操作してシフトします。レンジセレクターをアフターマーケットのものにリプレイスすることにより2WD Lowレンジが選択できるようになります。しかし、大きなトルクがリアに(デフロック時はリア片側に)集中することで駆動系破損のリスクが高まります。必要性を感じなければ使うべきではないでしょう。
弱点
シフトリンケージに使われているブッシュが経年による劣化と摩耗により破損してリンケージが外れることがあるようです。ブッシュは高価な部品ではないので定期的な点検と交換しましょう。アフターマーケットには対策品のシフトリンケージがあります。
まとめ
Jeepの母国アメリカでは、V8エンジンにスワップしてもそのままNP421ORを使うことも多いそうです。
大きなプラネタリーギアによる4:1という大きな減速比は、チェーンドライブであること、1本のシフトレバーしかないこと、PTO(Power Take Off)の出力を備えていないことを差し引いても非常に優れていると言えるでしょう。
以上がNP241ORの解説になります。今後も自分の理解を深めるためにジープ・ラングラーを紐解くような記事を書いていきたいと思います。もし良かったらシェアとブックマーク登録をお願いいたします。
最後まで読んで頂きありがとうございました!